漁港建設業が地域の守り手として貢献するために
災害時における漁港建設業の役割
近年、台風等の巨大化により各地の漁業地域において水害や流木等による災害が発生しており、地域に精通した漁港建設業は、「自然災害発生時の迅速な応急・復旧支援(漁港における航路・泊地等の啓開や倒壊した漁港施設等の復旧等)」、「事前防災準備(行政との災害協定の締結推進や相互支援体制の構築等)」に加え、「漁港施設や漁村の生活インフラ等の日常的な点検・管理」など地域の守り手として、大きな貢献を果たしています。
全国の漁港漁村では、このように激甚化する自然災害からの地域の守り手として、また、地域社会の維持・活性化などの面において、、漁港建設業が必要不可欠なサービス機能を担うエッセンシャルワーカーとして大変重要な役割を果たしています。
【新漁港建設業将来ビジョン(令和3年5月公表)より抜粋】
会員の皆様へ
貢献活動の写真など事例を募集しております。ご提供いただける方は事務局までご連絡ください。
E-mail:
災害協定締結による初動体制の構築
漁業地域においては、豪雨、台風等の災害が漁業活動等に重大な影響を及ぼすため、漁港・漁場に精通している全日本漁港建設協会等と災害協定を締結し、初動対応を強化することが重要です。
災害協定の締結により、発注者は、災害協定を締結している業界団体から会員情報に関する情報提供を受け、応急対策や復旧工事の契約相手方を選定するなど早期かつ着実に着工できます。
発注関係事務の運用に関する指針(令和2年1月30日改正)より抜粋
Ⅲ.災害時における対応
1 工事
1-1 災害時における入札契約方式の選定
- (随意契約)
- 発災直後から一定の間に対応が必要となる道路啓開、航路啓開、がれき撤去、流木撤去、漂流物撤去等の災害応急対策や、段差解消のための舗装修繕、堤防等河川管理施設の復旧、砂防施設の復旧、岸壁などの港湾施設の復旧、代替路線が限定される橋梁や路面の復旧、官公庁施設や学校施設の復旧などの緊急性が高い災害復旧に関する工事等は、被害の最小化や社会経済の回復等の至急の原状復帰の観点から、随意契約(会計法第29条の3第4項又は地方自治法施行令第167条の2)を活用するよう努める。
- 契約の相手方の選定にあたっては、被災地における維持工事等の実施状況、災害協定の締結状況、企業の本支店の所在地の有無、企業の被災状況、近隣での施工実績等を勘案し、早期かつ確実な施工の観点から最も適した者を選定する。
- また、必要に応じて、発注者が災害協定を締結している業界団体から会員企業に関する情報提供を受け、施工体制を勘案し契約相手を選定する方法の活用にも努める。
漁港に係る災害協定等の締結状況(令和5年4月1日時点)
→ 表を右にスクロールすることができます
支部名 | 被締結者 | 締結年月日 | 名 称 |
---|---|---|---|
北海道 | 甲:北海道開発局長 乙:(一社)全漁建北海道支部長 丙:(一社)全漁建会長 |
H25.10.28 | 災害時における北海道開発局所管施設等の災害応急対策業務に関する協定 |
青森県 | 甲:知事 乙:(一社)全漁建青森県支部長 丙:(一社)全漁建会長 |
H24.11.9 | 漁港・漁場・漁村の大規模災害時における応急対策業務に関する協定 |
岩手県 | 甲:知事 乙:(一社)全漁建岩手県支部長 |
H25.4.1 | 災害時における漁港漁場の応急対策業務に関する協定 |
宮城県 | 甲:知事 乙:(一社)全漁建宮城県支部長 |
H27.4.15 | 災害時における漁港・漁場の応急対策業務に関する協定 |
秋田県 | 甲:知事 乙:(一社)全漁建秋田県支部長 丙:(一社)全漁建会長 |
H26.8.20 | 漁港・漁場・漁村の災害時における応急対策業務の応援活動に関する協定 |
福島県 | 甲:県土木部長 乙:(一社)全漁建福島県支部長 |
R3.3.9 | 災害時における漁港、海岸保全施設の応急対策業務の支援に関する協定 |
茨城県 | 甲:知事 乙:(一社)全漁建茨城県支部長 |
R3.7.19 | 災害時における漁港の応急対策業務に関する協定 |
千葉県 | 甲:知事 乙:(一社)全漁建千葉県支部長 |
H30.3.9 | 地震・風水害・その他の災害応急対策に関する業務協定 |
神奈川県 | 甲:東部漁港事務所長 乙:西部漁港事務所長 丙:(一社)全漁建神奈川県支部長 |
H29.6.19 | 地震・津波・波浪・その他の災害応急工事に関する業務協定 |
三重県 | 甲:知事 乙:(一社)全漁建三重県支部長 丙:(一社)全漁建会長 |
H27.1.28 | 漁港・漁港海岸における災害時の応急対策業務に関する協定 |
甲:南伊勢町長 乙:(一社)全漁建三重県支部長 |
H27.8.10 | 漁港・漁港海岸における災害時の応急対策業務に関する協定 | |
島根県 | 甲:県農林水産部長 乙:島根県港湾漁港建設協会長 |
H28.4.1 | 漁港・漁場の大規模災害時における応急対策業務に関する協定 |
山口県 | 甲:知事 乙:山口県漁港建設協会長 |
R4.2.3 | 漁港の大規模災害時における応急対策業務に関する協定 |
高知県 | 甲:県港湾空港局長 乙:県海洋局長 丙:高知県港湾空港建設協会長 丁:(一社)全漁建高知県支部長 |
H17.10.13 | 災害時の応急対策業務に関する協定 |
佐賀県 | 甲:県農山漁村課長 乙:佐賀県港湾建設協会長 |
H22.9.1 | 漁港施設及び区域内における災害時の応急対策に関する協定 |
長崎県 | 甲:県各振興局長 乙:(一社)長崎県港湾漁港建設業協会長 |
H18年度 | 大規模災害並びに事故発生時における支援活動(社会貢献)に関する協定 |
甲:知事 乙:(一社)長崎県港湾漁港建設業協会長 |
H26.5.28 | 大規模災害発生時における広域支援活動に関する協定 | |
熊本県 | 甲:知事 乙:熊本県漁港建設協会長 |
R2.12.24 | 大規模災害時の支援活動に関する協定 |
大分県 | 甲:県農林水産部漁港漁村整備課長 乙:(一社)全漁建大分県支部長 |
H26.3.20 | 災害時等における漁港の緊急応急対策業務等に関する協定 |
甲:大分市長 乙:大分県漁港建設協会長 |
H25.3.27 | 災害並びに事故発生時における支援活動等に関する協定 | |
宮崎県 | 甲:知事 乙:宮崎県港湾漁港建設協会長 |
H25.5.21 | 大規模災害及び事故発生時における応急対策業務等に関する基本協定 |
鹿児島県 | 甲:知事 乙:鹿児島県港湾漁港建設協会長 |
H28.2.10 | 災害・事故発生時の海上における応急対策に関する協定 |
沖縄県 | 甲:知事 乙:沖縄県漁港建設協会長 |
H28.3.22 | 大規模災害及び事故発生時における応急対策業務等に関する基本協定 |
災害協定の形態
- 災害協定は、一般的に都道府県と建設業団体との二者協定ですが、平成28年4月、島根県と当協会島根県支部が締結した災害協定は、島根県所管施設の他、市町村から島根県に支援要請があった場合には市町村所管施設についても、島根県が島根県支部に対策業務を要請できる仕組みで締結しています。
- 島根県所管施設については、人員、作業船、重機及び資機材の調達、並びに応急対策工事の実施に要した費用を災害協定に基づき島根県が負担し、市町村所管施設については、市町村の要請に基づく対策業務に要した費用を災害対策基本法第92条に基づき市町村が負担することとなります。
災害協定の締結によるメリット
早期かつ確実な復旧支援
発注者は、災害時において、品確法第7条第1項第3号に基づき、随意契約等緊急性に応じた適切な入札及び契約の方法を選択するよう努めることとなりました。
随意契約の相手方の選定にあたっては、災害協定の締結状況等を勘案し、早期かつ確実な施工の観点から最も適した者を選定することができ、また、必要に応じて、発注者が災害協定を締結している業界団体から会員企業に関する情報提供を受け、施工体制を勘案し契約相手を選定する方法を活用できます(発注関係事務の運用に関する指針Ⅲ.1.1-1)。
漁港建設業者のメリット
「発注関係事務の運用に関する指針Ⅲ.1.1-1」に規定する随意契約に加え、漁港建設業者には、以下のメリットがあります。
- 水産庁直轄工事おける総合評価落札方式では、施工能力評価型の地域貢献度の必須項目として、国又は地方公共団体と漁港関係の災害協定等を締結していることを前提とし、この協定に基づく過去5ヶ年度における活動実績または訓練実績を評価します。
- 新しい漁港漁場整備長期計画(R4.3閣議決定)では、災害に対して、しなやかで強い漁港・漁村の体制をつくることを計画として位置付けていることから、従来の評価点2.0点が令和5年4月に4.0点となりました。水産庁[外部リンク]
- 三重県においては、漁港・漁港海岸の協定を締結し、緊急時を想定した連携訓練への参加実績がある場合、9.0点の評価点が与えられます。(その他の協定3.0、未締結0)三重県[外部リンク]
水産庁直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン(令和5年4月公表 水産庁漁港漁場整備部)より
※共同企業体(特定・経常JV)の場合は、代表者又は構成員のいずれか1社の災害協定に基づく活動実績を評価する。
技術者不足の市町村等への支援
市町村における技術職員の減少・不足に伴い、施設の整備、災害時の対応及び維持管理を円滑に行うことが難しくなっているという状況が見受けられます。
このため、漁港・漁場等に関係する5団体((公社)全国漁港漁場協会、(一財)漁港漁場漁村総合研究所、(一社)全日本漁港建設協会、(一社)漁港漁場新技術研究会及び(一社)水産土木建設技術センター)が結集し、水産基盤整備事業の実施等において市町村が直面する課題に対して必要な支援を実施できるようにすることを目的に、「水産基盤整備・維持管理に係る市町村支援のための連絡協議会[外部リンク]」を立ち上げました。
応急対策から復旧工事までの一貫支援
職員不足、技術者不足の市町村においては、全日本漁港建設協会、水産土木建設技術センターとの災害協定を締結することにより、災害発生後の応急対策から、災害査定、復旧工事まで一貫して必要な支援が受けられます。
漁港施設点検システム
全日本漁港建設協会の漁港施設点検システムを活用することにより、スマホによる施設撮影だけで、写真、位置、気象状況等の情報が整理、蓄積でき、県市町村職員の日常及び災害時の施設点検を簡単に行うことができます。