全日本漁港建設協会概要

会長挨拶

大島登会長
協会創立の精神を引継ぎ、食の安全安心、漁業の安全確保、生活の安全、災害からの漁村の安全確保、我が国200海里海洋国土の確保に貢献するため、諸般の慣行、制度の改善、会員活動領域の拡大やそのための調査研究活動に一層の努力を傾注いたします。

このたび、平成23年5月12日の第34回通常総会において、歴史ある全日本漁港建設協会の会長に選任いただきましたことは大変名誉なことであり、有り難く会員の皆様に厚く御礼申し上げます。しかし、その責任の重さに思いを致すとき、我が身の浅学非才さを改めてひしひしと感じ、身のすくむ思いが致しております。役員をはじめ会員の皆様の暖かいご支援とご協力をお願い申し上げる次第でございます。

本協会は、昭和53年の創立以来、広く社会公共のために尽くすという高い志を掲げ、会員の保有する優れた建設技術をもって漁港漁村の健全な発展と活性化に直接貢献しつつ、郷土の発展と共に成長する漁港建設業者の集まりを目指してきました。そして、坂井名誉会長、大島前会長を先頭に副会長、支部長等役員の皆様の一致協力の下、協会の総力を結集して強力な活動を展開し続けてまいりました。

そして今日まで、漁港建設業界懸案の重要課題である設計・積算歩掛の改善合理化、漁港関係事業優良請負者表彰制度の創設、水産工学技士の漁港工事における配置義務化、総合評価入札方式の現状調査、海藻ビジネス研究会、離島及び周辺漁場開発プロジェクト研究会、離島積算問題研究会など輝かしい成果を上げるとともに多様な時代を先取りした調査活動を行ってきました。そして今回の東日本大震災においても、会員間の互助及び会員による災害復旧への迅速な着手及び東日本大震災支援検討委員会準備会の迅速な立ち上げなど目を見張る活動がありました。このように当協会は、名実ともに強力な組織体となっております。協会創立以来の坂井名誉会長、大島前会長はじめ役員、会員の皆様のご努力に対し、改めて敬意と感謝を申し上げる次第であります。

さて、昭和53年当協会の創設以来、数度の政権交代を経て、我が国の国土の隅々の漁港漁村整備を通じて漁業地域を振興しようとする当協会の考え方が幾度となく危機に面してきました。そのたび毎に皆様方会員のご努力により、それらを跳ね返して来たところです。今また、この当協会の考え方が、選択と集中、集約とか小規模漁港整備抑制という言葉に代表される考えにより、危機に瀕しています。

我が国動物性たんぱく食料を安定的に確保するという目的のもと平成13年に水産基本法とともに漁港漁場整備法が制定され、水産庁組織も漁港部から漁港漁場整備部へ変更されて以来10年がたちます。そして、現在までの間、世界及び我が国の社会経済情勢は大きく変化し、安全、安心の確保とそれらの言葉が非常に重要なキーワードとなっています。漁業と漁業地域にとっては、食の安全安心、漁業の安全確保、漁家生活の安全、災害からの漁村の安全確保、そして447万㎡という世界第6位の海洋国土の保全確保の5つの安全安心の確保に対して、私たちの漁港建設技術を通じて貢献しなければいけない時代となっています。

ここで、この5つの安全安心を確保していくために一言所見を述べます。1997年、平成9年4月28日付け毎日新聞の一面のコラム「余禄」に次のような文章がありました。

海に面して5つの小さな漁村が並んでいた。

ある時、それぞれの漁村の村長さんが、漁港をつくってほしいと陳情してきた。

大蔵省の予算担当官は困惑して「5つではなく、せめて2つに集約して港をつくってはどうか」ともちかけた。

やがて5人の村長さんは予想外の答えを霞ヶ関に持ってきた。「2つなら要らない、全部つくる、全部つくらないかのどちらかだ」

結局、海岸線に並んで小さな漁港がほぼ同時期に完成した。公共事業の世界では、寓意を込めて語り継がれている話だ。

私はこれを読んで、この話は全くおかしい、日本は何時からこのようことが当たり前に語られる時代になったのかと、怒り心頭に達しました。まず、我が国の隅々の地域で、先ほど述べた5つの安全安心の確保をし、生活している漁業者や地域の人々を馬鹿にしたものであること。次になぜその人たちが選択されたり、集中されたりしなければならないのか。そして、5人の村長さんで話し合い(喧嘩)して5つの漁村の内、生き残る2つを選べば、整備しようとは何事でしょう。なぜ漁村という共同体、漁村で構成されている地域の共同体を破壊する必要があるのでしょうか。

私たちの国は小さな陸域と広大な海洋国土の中で「和と協調と互助、すなわち絆」を持って生活をしています。今またこの大震災の復興の中で、復旧すべき漁港について、選択とか集約が論じられています。このような災害復旧復興でこそ、みんなが生き残っていくために「和、協調、互助、絆」が大事です。

全日本漁港建設協会は、地域社会との密接な連携交流を図って地域社会への奉仕とその期待実現に絶えず努力を重ねてきました。私は、坂井名誉会長、大島前会長や役員の皆様のご指導を仰ぎながら、当協会創立の精神を引継ぎ、食の安全安心、漁業の安全確保、生活の安全、災害からの漁村の安全確保、我が国200海里海洋国土の確保に貢献するために、諸般の慣行、制度の改善、会員活動領域の拡大やそのための調査研究活動に積極的に取り組んでいきます。そして、会員の技術力の向上、社会的地位の向上を目指して協会運営に一層の努力を傾注いたします。

会員の皆様のさらなるご支援とご鞭撻を心からお願い申し上げ、就任の挨拶に代えさせていただきます。

全日本漁港建設協会 会長 長野 章